星を捕る人

 愛知県立芸術大学創立50周年企画「芸術は森から始まる」の中のコンサート企画「森羅」の、「Three Trees」というコンサートで、「星を捕る人」という作品を上演させて貰った。
 メンバーはお馴染みかしやましげみつさん(孤独部)(あたらしいまち)と、柳瀬さくらさん(あたらしいまち)。

 今までは誰かと何かを作るにしても、役割分担をしてやることが多かったが、今回は、作品の思い切りコアになる部分も、かしやまさんと話をしながら作っていったので、完全に共作という感じになった。
 もちろん、プログラミング的な部分と音楽的な部分は僕がやったし、文章はかしやまさんに書いて貰ったので、役割分担をしていなかったわけではない。
作品としては、

0.舞台の上に50個のろうそく的な光り方をするLEDを、10個の譜面台の上においておく。
1.最初太陽系の公転図から始まって、1年の公転の様子とそれに絡めたお話を聞いてもらう。
2.さくらさんが登場して、0~29までの短い文章を読み上げる。読み上げるたびに、LEDを1つ消す。LEDが消えると、頭上のスクリーンに星が上り、その星が定期的に音を鳴らす。
3.29まで読み終わったら、残りは数を数えながらLEDを順番に消していく。その時、星はキラキラしながら画面上を飛び回り、音楽は拍の全くない音楽になる。星が断続的に上がり続けるようになる。
4.50まで数え終わると、また公転図が表示されて、少し前半の続きのような話をする。
5.最後に、51番目のお話をして、星が音を鳴らしながら再び表示されて、おしまい。

という感じだった。
写真はこんな感じ。撮影は一部かしやまさん。

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 まず最初に、星を捕る人というタイトルを考えた時には、僕の頭のなかでは「かしやまさんが舞台上にある何か光るものを集めながら、様々な人々の話をする」というぼんやりとしたシーンのイメージだけがあった。
 初めて会議をした時に、かしやまさんから地球暦というもののお話を伺い、太陽系の惑星の公転と、50周年を結びつけたお話にしようという流れになった。
 地球暦と灯りを消していく演出の両方を使おう、という話になったのは実は結構時間が経ってからで、それまではなんとかして星の運行と音と物語を全部制御出来るシステムやルールはないか?というのを必死に探していた。
 色々あって今の形に落ち着いたけれど、結構上手く行ったのでは…と思っている。
 舞台にも、かしやまさんではなくかしやまさんが紹介してくださった柳瀬さくらさんが登ってくれる事になった。

 ただ、複数人で何かを協力して作るときの僕の悪い癖で、コンセプトを重視しすぎて遊べるところで遊べなくなってしまう、というのがあって、今回のも、もっと星の色や音色でルールを増やして遊べる筈だったのになぁ…と後から思うばかり。思うばかりは簡単故。

さて、技術的な所で言えば、今回太陽系の運行と星が上がっていったりするソフトの制作に結構時間と労力を使った。
https://bitbucket.org/yugapanda/shinra_merged/
ソースはここにあるけれど、これだけでは音は鳴らないので、使えはしない。
(実際にはOSCでMAXに情報を送って、音はMAXで鳴らしてた。MAXはGit管理していない(今回は簡単だったのでする必要がなかった))
ビジュアルだけなら、全ファイルをProcessing3.x系に突っ込むとそれだけで動く。

先に星図のを作ってから、星を打ち上げる方を作ってマージしたのでファイル名がMergedになっている(適当すぎる)

 今回のは結構各classの粒度を丁度よい塩梅に切り分けられたかも…と思っているけれど、ちょっと依存度が高すぎたり、各パラメータの変更のためにソースをいじらないといけなかったり、デザパタ全く使ってなかったりで、まあ褒められた感じではあまりない。
 けど、使いまわしたりは多分しないし、いつもよりは変更も容易だったし、まあ少しは進歩しているかな…という感じ。

 最後に、直前まで演出やセリフが変わり続けたにも関わらず、本番で最高の演技をしてくれたさくらさんと(本当に、本番が最高だった。)、前日まで台本の変更をしてくれたかしやまさん、それから準備を手伝ってくれた後輩たちと、企画に誘ってくださった寺井教授に感謝。

戯曲演奏計画Vol.3


前回はかしやま組として参加した戯曲演奏計画だったが、今回は個人で参加した。
ピアノを松島さんにお願いし、演技を村岡さんにお願いした。
タイトルは「チャネル」という。動画は、後でタイトルを入れたりノイズを除去したりしたものをアップロードしなおすつもり。
 カメラのアングルが悪い事もあるけれど、演出に映像を用いているのも手伝って、動画で観るとかなり臨場感が薄くなってしまうなぁ…。

 チャネルのコンセプトは、「単純変換系の音楽は視覚的な、或いはそれ以外の方法で何かしら変換される前との相関が示されなければ、視聴者にとっては特に意味がない」という点についての改善もしくは代替案の提示、というところである。
 繰り返しになるが、単純変換系の音楽、つまり音楽以外の何かしらのデータのもつ値を、音楽の持つパラメータ(音高、音価、音強など)に当てはめて単純に音響化した音楽は、その結果だけが音楽として耳に入ってくる視聴者に、その成り立ちがどうだとか、どのような経緯でその音響になっているか、などの情報は殆どもたらされない。つまり、少し不自然なだけの音楽として受け取られてしまう可能性が高い。
 さらに「これは元々なんとかという本の文字列を音に当てはめた曲です」というような場合には、以下のどちらかになってしまう可能性が非常に高い。

1.説得力のない不協和音がかなりの頻度で出てくる曲
2.耳障りは良いが、どの本を入力しても殆ど印象が変わらない

 前者の場合、殆どの人は楽しめないだろうし、後者の場合、「その本」である意義が薄い。
 前者になってしまう理由は説明する必要ないだろうけれど、少し触れると、12音ある音程を、本などのような、ある程度ランダムな頻度で出現する値に当てはめると、半音でぶつかってしまった場合などに不協和音が生じる。これはよほど音楽に奇跡的に適したデータ(今回の場合は本)でなければ防ぐことは難しい。
 後者になってしまう理由はもう少し具体的に説明する。これは本などを変換した場合でも、動画やその他のデータを変換した場合にも言えることである。
まず、アトランダムな値から音高を設定する場合、不協和音を避けるためにとれる手段はいくつか存在する。

  1つは、短音程を含まないスケール(ペンタトニックや全音階など…)を用いる、という方法で、これは良く用いられる安易な方法であると言える。(僕は割と好きで良く使う。安易でもやはり心地よいと思う。)
 もう1つは、予め和音やメロディーの定型を決めておいて、それらの中から選択する、という形にする方法である。

 後者は作り込もうと思えばどこまでも作りこめるが、やはり使用される定型が1曲内で固定されないため、少しちぐはぐな雰囲気の曲になってしまうだろう。
 前者は全体的に均質な音楽になるが、変化に乏しくどのデータから作成しても同じような雰囲気になってしまう可能性が高い。

 そこまでして、それらのリスクを抱えながら、何かしらのデータをわざわざ曲に変換する、という利点は何だろう?

 色々と問題点を挙げてきたが、その技法の問題点は1点だけだとも思っていて、それは「変換される前の情報との相関が視聴者に見えにくい」という部分である。それさえ改善されれば、音楽的には上記のような問題を抱えていたとしても、作者が感じているような「変換されていく快感」を視聴者が享受できる可能性がある。
と、考えたのがこの作品を作ろうと思ったきっかけではあった。

 最初は、戯曲を朗読して、それがリアルタイムに可視化されて、耳障りの悪くない音楽に変換(演奏)されていくだけでも良いかも知れないと考えていたのだが、なんとなくそこに必然性と物語性が欲しくなってしまった。

 そして、必然性と物語性のことを考えていたら、どんでん返しが欲しくなった。
なので、
 文字列を音楽に変換して演奏していた序盤→音楽を文字列に変換したものを朗読する終盤
この構成を軸に戯曲を作ることにした。

 ストーリーについては見て貰ってのと通りの感じになった。
ざっくり言うと、音楽をコントロールしようと夢中になっている間に、逆にコントロールされてしまっている、という感じだ。

 文字列を音に変換するルールについては、少し複雑で、メロディーに割り当てられる文字と、和音に割り当てられる文字、ベースに割り当てられる文字がそれぞれ決まっていて、メロディーに割り当てられる文字は、即座に音高に変換される。
 和音に割り当てられる文字は、次にベースに割り当てられる文字が出てくるまでスタックされる。
 最後に、ベースに割り当てられる文字が出てきたときに、その和音に割り当てられる文字によってベースの長短3度、4度、5度、短7度、長2度の音程をが割り当てられる。
 また、それらどれにも該当しない、メロディーのオクターブを変更する効果のある文字などもある。
が、最後にそのルールから逸脱していって終わりたかったので、割ときちんと考えたルールだったけれど劇中あまり効果を発揮しなかった。
それはそれで、別の所でちゃんとやってみたい気もする。
というか、普通に耳障りの良い感じの変換ルールで、朗読と音楽が同時に流れるだけ、というのもやってみたい。言葉が音に変換されていく過程は、想像していたよりも面白かった。

 実際には、変換前後を視覚的に表現したり、その他の方法で提示するのは、別に新しい事でもないし、既にかなりやり尽くされている領域だとも思う。このレポートは「やってみた感想文」というような風に読んでもらえると嬉しい。

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 この素敵な企画を継続されている山田さん、忙しい中出演してくださった松島さんと村岡さん、本当にありがとうございました。
村さんのあの最後のぶっ飛んた感じと、松島さんのあの微笑がなければ成り立たなかった作品だと思っています。
 またよろしくお願いしますm(__)m

戯曲演奏計画2015

 戯曲演奏計画に、今年はかしやま組として参加しました。
(皆様お疲れ様でした。忙しいから参加しないとか言ってたくせに結局参加してすみません)
(ご来場頂いた方、ありがとうございました)
 今回、かしやま組では、「戯曲を演奏する、とは?」にフォーカスを絞った内容で作品を組み上げていきました。

 以下は、参加してみて思った事や、やったことを個人的な視点から書いたものです。
 全体の総意ではないですし、かしやまさんはもしかしたら違うことを考えているかも知れません。
 あくまで「音楽担当から見た今回の戯曲演奏計画かしやま組って、こんなの!」という内容である事をご留意ください。

  戯曲を演奏する、というにあたって、「音楽を物語の中に組み込む」というだけでは、戯曲を演奏していることにはならないのでは?というのが出発点だったよ うに思います。もちろん、戯曲演奏計画というのは、「戯曲を演奏するとはどういうことか、というのを考える会」ではないので、必ずしもそのようにする必要 はないのですが、今回は一つ指針として、そのような方向をかしやま組は向いていました。

 まず、台本の時点で普通の演劇や朗読と異なる主な点は以下の2つだったように思います。
役者が演技をしない
本来ならト書きに当たる部分が役者のセリフに含まれている
 かしやまさんはこの戯曲を、台本や演劇ではなく、「朗読と音楽によってイメージを立ち上げることの出来る楽譜のようなもの」として書いたのだと僕は思っています。
 その結果、演奏される音楽+朗読される戯曲のセッションのような形態になりました。
 僕は台本を楽譜のように追いかけて即興的に音を鳴らし、役者はその音を注意深く聴ききながら朗読をしました。
 舞台上には舞台装置が用意されていて、そこで実際に普通の演劇を行う事も出来たのですが、あえて音と声だけで表現する事によって、より各々の中に、強いイメージを想起させられるのではないか、という試みでもあったと思います。
 試みが成功したかどうかはわかりませんが、特に夜の公演では個人的になんだか良い手応えを感じました。
 

 では、音楽担当が実際に何をやっていたかを書いていこうと思います。主に技術的な事やどんな事を考えていたかを中心に。

 まず、機材ですが、mac book proとmicro key、nano controlのみでした。
 ソフトはmaxとkontakt、その他基本的なVST(EQやReverbなど)

 空気感を表現するために、安直ですが、コントロールしやすいノイズを生成する部分が必要だろうと思ったので、まずそこを作りました。

  画像も載せましたが、waveファイルを少しずらして4回同時に再生し、再生スピードをそれぞれつまみでコントロール出来るようにしたものです。特に何も 考えずに適当に作ったのですが、音程がコントロールしやすい事と、読み込ませるノイズによってはそこそこイメージに近い効果を得ることが出来たので、これ を4個用意して、それぞれにノイズを読み込ませて使用しました。ボリュームと音程感はnano Controlの1番~4番にアサインしています。
 この部分で、タバコの煙や花粉、空なんかを表現したりしました。(これ自分で言うの本当に恥ずかしいな、なんか…表現しましたって…)

 次に、春の大学生達や彼らを含めた空気感を表現するために、継続して鳴り続けるそれぞれの音を作りました。
こ れまた仕組みとしては非常に簡単で、、決まったスケール内の音がランダムに鳴るだけ、なのですが、その鳴る確率(頻度)とヴェロシティをフェーダによって コントロール出来るようにしてあります。(2枚目と3枚目です。2枚目は3枚目の中の「ran」というサブパッチの中身です)
 これを、4つ作り、フルートの高音、低音、Stringsの高音、低音をそれぞれフェーダを4つ使って割り当てました。
 具体的には、朝子が出てくるとフルートの高音を鳴らして、主張するところは低音を足して、同様に葵が出てくる時にはストリングスを鳴らして、後藤が出てくる時にはギターの音色でキーボードを弾く、という感じに展開とダイナミクスを作りました。
 常にReverbを全体にかなり深めにかけて空気感を作って、ドアが開く時にはリバーブタイムを変えて空気を揺らして…という風に、かなりシステマティックに、台本を完全に楽譜のように捉えて音を鳴らしていたつもりです。
 キーボードで調を変えられるようにしたので、ありがちな感じで順番に転調していって最後に主調に戻る、みたいな事もやりましたが、イージーですがやっぱりあれはなかなか効果的だなぁとも思いました。

 こんな風にリアルタイムに音を作りながら劇伴をしたのは前回のまにまにを含めて2回目なのですが、かしやまさんがかなり自由にやらせてくれるので、とても楽しかったです。
 またこういう事が出来る機会があると良いな~と思いま し た。

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